the onishimemo

憧れの芋煮会をした

先日、芋煮会をした。

芋煮会とは、東北で秋に屋外に集まって里芋を煮てワイワイするイベントだ。数人でこぢんまりと開催することもあれば、何百人も集めてプールほどの大きさの鍋で芋を煮ることもあるらしい。とにかく秋の東北のビッグイベントなのだ。
さて、この芋煮会、東北の人にはおなじみだろうけど、東北以外の地域、特に西日本では聞き慣れない人も多いのではないだろうか。

私はこの言葉を匿名掲示板で知った。ある秋、芋煮会に関するスレが立っていたのだ。スレタイによれば、東北の人は芋煮会に命をかけているとのこと。文字だけ見れば、芋を煮る楽しそうな会だと言うのに、そこに命をかけるとは一体何事か?
それから毎年秋になると必ず芋煮会スレを目撃するようになった。東北の人は毎年命をかけている様子だった。

気になる。東北の人が命をかけている芋煮会とやらが気になる。やってみたい。私の芋煮会への好奇心は、秋を迎えるごとにむくむくと大きくなっていった。

芋煮会はソロで行うものではない。一人で芋を煮たら、それはただの芋を煮て食う人だ。会にするには人数が必要なのだ。
しかし、「芋煮会をしよう」と誰かを誘うことはできなかった。なぜなら、確実に「なんで芋煮会がしたいの?」と質問されるためだ。東北に縁もゆかりもない私が西日本で芋を煮たがるなんて不自然極まりない。でも「匿名掲示板で毎年見てるから気になる」なんて、さすがに言いたくなかった。こんなことをリアルで口に出すのはマジのヤバイ奴だ。

そんなある日、仲のいい先輩とLINEでやりとりをしている最中、先輩が押したスタンプが目に飛び込んできた。「芋煮会」。スタンプには手書きでそう書かれていた。とてもかわいい絵柄のスタンプだった。おそらく、先輩は芋煮会そのものではなく、絵柄や独特の世界観に惹かれて買ったのだろう。でも私は今しかないと感じた。芋煮会のスタンプを押した人を芋煮会に誘っても不自然ではないはずだ。私はかなり強引に誘って芋煮会の約束を取り付けた。

かくして、念願の芋煮会が開催される運びとなった。確実に実行するため、すぐに他の先輩や後輩も誘ってLINEグループに押し込んだ。案の定、「なんで芋煮会?」と尋ねてくる人もいた。もちろん「先輩が芋煮会のスタンプを押したから」と答えた。私は嘘などついていない。

芋煮会の参加者に東北出身者はおらず、私も含めた全員が芋煮に関する知識はゼロだった。だから、実はみんな「芋煮会=複数人で芋を煮る」という認識しかなかった。何なら芋をジャガイモと勘違いしていた人間もいた。私のことだ。
こんな調子で作法もレシピも分からないので、ひとまず本場の東北からセットをお取り寄せすることにした。これもお取り寄せする段階になって知ったのだが、冬は芋煮のシーズンオフなので、ほとんどのショップが芋煮セットの取り扱いを終了している。今回は、後藤屋本舗さんの米沢牛入り産直いも煮セットをお取り寄せすることにした。

しかし、お取り寄せの芋煮セットを複数人で煮て食べて、果たしてそれは真の芋煮会と言えるのだろうか?いや、我々は山形の人が用意してくれた芋煮セットに乗っかっているに過ぎない。東北の人たちは毎年命をかけていると聞く。だから、我々ももっと真摯に取り組む必要がある。そういうわけで、全力で追加の具材を選んだ。議論を重ねて厳選した追加具材は、ニンジンとゴボウと油揚げと舞茸だ。一見、ありふれた鍋の具材だが、選んだときの気概が違う。だから普通の具材ではない。これで芋煮会の準備は整った。

セットの内容はこのような感じだった。油揚げと舞茸、ネギ1本はこちらで買い足したものだが、価格の割に十分すぎる内容だと思う。ちなみにコンロの手前のボウルに入っているのはこんにゃくだ。東北のこんにゃくはナタデココみたいに真っ白なことを知った。

そして里芋も真っ白で大きい。里芋を入れたら土鍋はいっぱいになった。水に浸した様子がとてもきれいだと思った。

味は、控えめに言って最高だった。出汁は醤油ベースでほんのりと甘く優しい。食べても食べても全く飽きることがない。この出汁で煮た野菜は無限に食べられるんじゃないかとさえ思った。米沢牛もめちゃくちゃ柔らかいし、何より甘い醤油味との相性が抜群だった。あと里芋がすごい。2,3個食べたら満足度は最高に達する。それくらいボリュームがある。だけど、優しい味がしみているので無限に食べることができる。やばい。太る。
シメはディナーカレーのルウを入れて、カレーうどんにした。これもまた信じられないくらいに美味しかった。語彙力がないので「やばい」「おいしい」しか言えないのが悔やまれる。

後ほど仙台に住む友人が教えてくれたのだが、芋煮の味付けと具材は地域によって違うらしい。仙台では味噌ベースに豚肉が主流とのことだった。豚と味噌の組み合わせなんて、美味しいパターンしか見たことがない。

念願の芋煮会は、予想していた以上に盛り上がった。こんなに美味しい鍋を少しひんやりした時期の屋外でみんなで囲むなんて…。考えただけで、お酒が飲みたくなる。東北の人が芋煮会に魂を注ぎ込むのも理解できた。魂を注いでもおかしくないくらい、本当にいい行事だと思った。

とても楽しかったので、また今年の秋に開催しようと思う。次回はきちんと作法に則って、河川敷などの屋外でやりたい。

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