the onishimemo

西成・薬味堂のカレーを求めて

ふと「西成にも美味しいカレー屋さんはあるのだろうか?」と思って調べてみたところ、「薬味堂」というお店がヒットした。

場所は西成警察署の斜め向かい。なかなかディープな場所である。というわけで早速行ってみた。

JR新今宮駅から約10分ほど歩いたところにお店がある。新今宮は滅多に来ない。というか大阪に住んで15年経つが、片方の指で足りるほどしか来たことがない。街をまじまじと見ながら歩いたのは今回が初めてだった。

西成は日雇い労働者の人が多い街だ。だから、マンションやアパートよりも圧倒的に宿泊施設の方が多い。あと荷物を入れておくためのコインロッカーも目立った。
そして西成は飲み物が安いとネットでネタにされているけど、食べ物も破格の値段。美味しそうなお弁当やお惣菜が100円や200円で売っていた。

新今宮を出て東に歩き、途中で南に曲がってまっすぐ歩いていくと、高い柵に囲まれた西成警察署が目に入る。この柵は暴動対策のためらしい。

そんな堅牢な警察署の向かい、商店街の角に薬味堂はあった。

お店に入ると、マスターが流暢な英語でお客さんと喋っていた。あとで聞けばタイの観光客の方とのこと。マスターは英語と恐らくフランス語が堪能のようだった。

薬味堂のメニューは3種類。どてカリー、ベジカリー、あいがけ。少し迷ってあいがけを選んだ。辛さは選べるようだったけど、普通でお願いした。ごはんは少なめ。

着席して一息ついていると、マスターがとても気さくに話しかけてきてくれた。マスターは西成ご出身で、もともと商社でサラリーマンをされていたんだけど、5年前に地元に戻ってカレー屋を始めたそう。

「どうして商社を辞めてカレー屋に?」と思わず訊いた。すると、「お金より、面白いほうがいいじゃないですか」と笑顔で返ってきた。実に大阪の人らしい回答だと思う。

あいがけカリー。左がどて、右がベジ、だと思う。マスターがカレーを置いてくれた直後にお店に電話がかかってきたので、どっちがどっちなのか聞くのを忘れてしまった。

カレーは今まで食べたことのない不思議な味だった。スパイシーなんだけど何だか甘い。どっちかが辛くてどっちかは甘いとかじゃなく、風味が絶妙な差で違う。でも決して似てはない。具はとろとろに煮込まれていた。夢中で食べた。あいがけにして正解だったな。

カレーを食べて、また少し談笑させてもらった。西成はここ10年で一気に変わったとのことだった。「昔はね、血だらけのおっちゃんとか歩いてたんですよ」と笑いながらマスターは言った。「今はもうそんな人いない」。
これが西成ジョークなのか事実なのかは分からないけど(恐らく事実だろう)、私ですら10年前とは雰囲気が違うと感じた。

雰囲気が変わってきているのは再開発とかそういうことだけではなく、西成に住む人が高齢化してきているのもあるんじゃないかなと思う。現に薬味堂に来るまでにすれ違った人のほとんどはご高齢の方ばかりだった。

「西成が変わっていくのが嬉しくもあり寂しくもあるんです、わがままかもしれませんが」というマスターの言葉はかなり印象的だった。
実は私も同じようなことをずっと思っていた。だけど西成に住んでないどころか来もしない、よく知りもしない私が言っていい言葉ではない。

お会計をして店から出るとき、「もう危ない街じゃないんで、良かったら散歩して帰ってください」と言ってもらった。マスターは西成を本当に愛しているんだろうなと思った。ただ、あいりんセンター付近は今は危ないかも(数日前にセンター閉鎖でちょっとした暴動があった)とのことだったので、とりあえず新世界に向かって歩くことにした。

続く。

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